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都会の底辺で木漏れ日を探し求める平山の視線描く【PERFECT DAYS】


昔から好きな監督ヴィム・ベンダース最新作とあって、
制作発表時から期待した日本が舞台の【PERFECT DAYS】。
ユナイテッドシネマ秩父初日に観ることが出来た。
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幼少の一時期住んだ墨田区に住むという設定に懐かしさを覚えた。
今は若者も知らない「カセットテープ」が重要な役割となっているのも嬉しい。
小津安二郎をリスペクトする監督だけあって、
横長ではなく「東京物語」と同じスクウェアサイズ上映。
実は平山と言う名前も、東京物語の笠智衆の役名だ。
ホームレスの田中泯さんも良い。
あがた森魚さん、石川さゆりさんも良い感じ。
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役所広司演じる平山の視線を通して、
人間味が希薄な社会の中で見る「木漏れ日」。
関わりあう人とで重なって深くなる「影」。

真面目で気が付き「仕事ができる」彼は、以前は高級車に乗り、
部下を大勢抱えた一流のビジネスマン・・監督の弁・・だったが、
全てが嫌になって(何が原因かは明かさないが)
あえて 社会の底辺で「汚いと人が嫌がる仕事」公共トイレ掃除をする日々を生きている。
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神社の竹箒の音で目覚め、布団をたたみ、歯を磨き、
「小さな木」に水分を吹き付け、缶コーヒーを飲み、
カセットで音楽を聴きながら現場にクルマで行き、トイレ清掃を丁寧に行う。
昼は境内で「ともだちの樹」を愛でフィルムカメラで撮影し、サンドイッチを食べる。
帰ったらコインランドリーで洗濯し銭湯に入り、地下街の食堂で夕食をとり、
たまにはバーに顔を出す。
そんなルーティーンの繰り返しに見える日々は、
実は その日にしか起きない 瞬間的に平山にしか当たらない光に喜びを見る、
一日一日は、それぞれが個別の【PERFECT DAYS】なのだと。
ラストで数分間 役所広司の顔だけを映し続けるショットの後に
強烈な西日が当たる・・今日も今日しかない特別な日だ。

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# by arthiropon | 2024-02-16 19:33 | 洋画 映画館  

常にアーリータイムス(開拓精神)であれ!伝説のバンドがホンキーライブ

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結成50年のアーリータイムスストリングスバンド。
古希直前が若手という、全員ほぼ70歳代の勇者たち・・
松田ari幸一、村上律、渡辺勝、今井忍、
そして紅一点の竹田裕美子さんの演奏と歌声に
古希直前の私も圧倒された。

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アーリータイムスとう言葉の響きは有名なバーボン(ジム・ビームの叔父ジョン・ヘンリー・ジャック・ビームが創業)が思い浮かぶが、
開拓精神という思いも込められていて、禁酒法時代も作り続けた(医療用と申告して)・・
弾圧に屈しないという精神もあるのでしょうね。
そんな骨太かつ繊細な個々が集められた音楽を体感した夜でした。

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音楽であれ、絵画であれ、他のどんなジャンルであっても、
生活の中で 常にアーリータイムス(開拓精神)でありたいと再認識できました。
秩父ホンキートンクに感謝です。
http://www.chichibu.ne.jp/~honky/
https://goodanddusty.wixsite.com/earlytimesstrings

オープニングの水野晋太郎さん、
自作の曲・・酒を飲むのも楽じゃない 良かったですね。
みやぎももよ さんのボタンアコーディオンが加わって、
余韻が増しました。

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# by arthiropon | 2023-11-20 09:38 | ライヴの揺さぶり  

金森幸介 すべてを凌駕して伝わる音楽メッセージ。皆野ホンキートンクにて

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勧められて初めての金森幸介さんライブ。2023年10月9日
会場は、47周年老舗の秩父ホンキートンク。
加川良さん、西岡恭蔵さん、上田正樹さん、憂歌団、六文銭など、
そうそうたるミュージシャンが名を連ねる処だ。
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大阪人らしく、笑いをとって会場を和やかにする出だしだが、
数分で これは凄い人のライブに来た と感じた。

楽器演奏の上手さとか、歌い方の技とか、そうしたものを凌駕する
「金森幸介さん存在全て」を使って、
伝えたいこと感じたことをメッセージとして発信しているという印象。
圧倒されるのだが押しつけがましくなく、
心地よいのだ。

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思わずスケッチブックに手が動いていた。
ボールペンしかなく描き殴った感じだが(家で少し直して墨を塗った)。

オープニングも良かった。
バーヤン・・ご自身の生活の風景が見えるような、素晴らしい曲作りと歌声とテンポ。
さすがグンマーという最初の「赤城山の」歌も、しみじみと染みましたなあ。
独酔舎・・久しぶりだったが、あらためて、伸びのある良い声してるなあと感じた。
お二人とも私の個展でコラボしていただいたことがあり、感謝しています。
ケンメリ・・素敵なハーモニーと演奏。以前、鈴木さんの酒が飲みたい夜はライブ配信でお聞きしたことがあります。
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圧巻は、われらがホンキーのオーナー鈴木さんと金森さん共演。
まさにスペシャル・セッション。
ラストの全員のも素晴らしく
とてもいい夜を過ごさせていただきました。
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# by arthiropon | 2023-10-11 18:12 | ライヴの揺さぶり  

宮澤政治郎に焦点を当てた【銀河鉄道の父】

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ユナイテッドシネマ・ウニクス秩父で初日に鑑賞。
あなたの絵には、宮澤賢治の印象があるというご感想が元で、
3階の個展を開催した花巻の風景(イギリス海岸、下の畑、橋など)を、
この映画のシーンで懐かしく見ていました。
しかしほとんどが岐阜県恵那市でロケ・・なんでやねんって感じ。
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今まで賢治自身を描いた映画二つ・・「賢治その愛」「わが心の銀河鉄道」を見てきましたが,
いずれも賢治と父・政治郎との確執が一貫して描かれていました。
なので、この映画の予告編を見た段階で、これ事実と違うんじゃないの?という印象。
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本編を見て・・何度も死の境を漂った賢治を必死に看病して、自らは病気になってしまう政治郎は、
賢治を子煩悩に愛していたということを感じました。
やみくもに家業(高利貸し)を継がないなら縁切りだとかはせず、
賢治の度重なる金の無心にも応え、祖父の反対を抑えて学校にも行かせたわけですから。
ただ、雨にも負けず の登場の仕方は私にはどうも・・。
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賢治が本格的に童話を書くきっかけとなった、妹トシとのシーンは、
森七菜さんの演技も素晴らしく、胸を打ちました。
役所広司の熱演もですが、
田中泯さん、存在感ありますね。
益岡徹さんの医師も渋くて良かった。
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宮沢賢治を扱った映画ですが、賢治の本質(内奥)というか、
賢治作品の心にあふれる豊かさのようなものは、
描けていない(踏み込んでいない)映画だと感じました。
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# by arthiropon | 2023-05-06 09:58 | 邦画  

53年目のサンダンス・キッド 川越スカラ座にて

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亡き父は、しょっちゅう映画館に足を運ぶ映画好きだった。
小さい頃からたくさんの映画を見に連れて行ってくれたが、
創刊号からキネマ旬報を熟読していて、
やれ構図がどうの、編集がどうのとか、
当時の父の映画鑑賞は、『理屈をこねくりまわして見ている』ように感じた。

そんな自分が、はじめて自ら父を誘って見に行った映画が、
【明日に向かって撃て Butch Cassidy and Sundance Kid】だった。
今迄の映画の作り方とは違う「ニューシネマ」と呼ばれる風を感じたからだ。
バート・バカラックの音楽世界と異色の融合、
ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォードの白熱の演技、
キャサリン・ロス(卒業のエレーン)の美しさ。
スライド的、ドキュメンタリー的な運び方など、
すべてが新鮮に映った。父も良かったなあと驚いていた。

中学生の自分の部屋(個室なんかないので区切り)には、
ラストシーンのポスターが飾ってあって、
ステレオではないプレーヤー(音も聞こえる安直な機械)で、
ドーナツ版の「雨に濡れても」を一日中エンドレスで流していた。

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当時の劇場でも2回、ビデオや衛星放送を含めると数十回は見ている映画だが、
映画館でリバイバル上映されると知り、53年ぶりにスクリーン(川越スカラ座)で見た。
ニュープリントでもレストアでもリマスターでもないので、
アカデミー撮影賞を取った映像は、もっと明るく奇麗だったはずだよなと感じたが、
それでも大きな銀幕で見られたことは、自分にとって意味があり良かった。
各シーンでこの時連れが笑ったよなとか・・思いがあふれた。劇場ならではだ。

当時購入したパンフレットやLPがどこかにあるはずだと探したら、
見事に出てきた。なんと初代キネマ旬報編集長の淀川長治さんの絶賛の文章が。
日本は高齢者の多い社会。こうした往年の映画(できれば奇麗にして)を見る機会を、
増やしていってほしいものだ。
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# by arthiropon | 2023-01-31 12:24 | 洋画 映画館