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永島慎二の点と私の点が、でんえんで線に。

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私は10代の頃、職業画家になったらおしまいだなどと考えていた。
永島慎二の【嘔吐】を読んでいたころの もがき という点と
永島慎二が足しげく通い漫画にも登場する名曲喫茶でんえんでの
私の個展111回目・・今私が描き続け発表し続けているという【点】が
私の中でつながった気がする。自分に言えることは、私も嘔吐し、
彼の3年ならぬ数十年を、志ゆえに描いてきたこと・・違うのは
支えてくれる妻(パートナー)が存在することだ。でんえんのママも言ってくれた・・
ここで多くの人を見てきたが、本当に稀(まれ)なことです・・と。

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産まれて記憶にないころから、私は絵を描くのに夢中な子供だったらしい。
そこらじゅうに描くので、母は消しゴムなども持って私の後を追いかけたらしい。
新築の家のどこかに描いて、母は平謝りに謝った・・ごめんなさい(苦笑)
10代の頃、永島慎二の漫画作品が大好きで、中でも漫画家残酷物語は
紙をすり減らすほど読んだ。【嘔吐】のストーリーの概略・・
生活のために意に反したものを描き続ける漫画家が、
ある時他人事のように自分の漫画を見て、吐き気を催す・・
帰宅して妻に「本当に望むものが描きたい・・それは生活手段が無くなることを意味する・・だから別れてくれ」と告白し、3年間肉体労働をしながら身を削って
信じたものを描き続け、ついに出版社を廻るが、
どこも相手にせず、絶望して描いたものをビルの屋上から巻いて、自らも飛び降りる。
身投げした向かいのビルの出版社のデスクが、落ちてきた漫画を拾い集めて、優点を見抜き
出版して話題をさらい、ベストセラーになっていく。行方不明扱いの著者は不具者となって、
道端でホームレス生活をし通る人を眺めている。子供が持っている漫画・・まさにそれは自分が命がけで描いた漫画だ・・それは俺の漫画だ、俺が描いたんだ・・その声は届かずに、人知れず絶命する。

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ニーズというものがあり、志というものがある。
アーチストが志で生活できない場合、99パーセントの人は、ニーズに傾倒し
いつのまにかニーズが出発点(動機づけ)になった作品を作り続ける。
絵の上手い人はいる・・掃いて捨てるほど多くいる。そうした中で唯一私が誇れるのは、
ニーズや催し(団体、個人を問わず)のためにではなく、
感動したものだけを生きざまとして描き続けていることだ。
昭和30年生まれの自分が、昭和32年創業のでんえんと出会い、悩んでいた頃の自分
永島慎二の描いたテーマに思いをはせていた頃の【点】と
今の私の【点】が、線になって結ばれた気がするのだ。
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by arthiropon | 2016-06-26 12:53 | 漫画のこと  

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