少年の心の傷の奥描く『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い
2012年 09月 09日
冒頭 甘いフォーカスで
幾人もの人が
逆さに スローモーションで落ちてくるような映像に
はっとする。
911でビルから落ちたひと
爆発の犠牲になった人たち
同時多発テロ・・・・
多量の武器を製造し、投入して
外国 イラクに出向いて
フセインと言う怪物を作り
次にタリバンを打倒する戦争となって
泥沼化。
よその国で起きていたはずの憎しみが
当事者の国に
対戦相手から持ち込まれた悲劇
よその国で多数の一般の施設が破壊されて
普通の家族が犠牲になった
その武器を作り戦争の一端を担ったアメリカの
繁栄の象徴ともいえる高層ビルに
民間の飛行機で突っ込むなどという
人道無視の行為が起きてしまった。
何が原因で 何が正しくて 何が悪い?
そんなことよりも
この酷く愚かで正当化などできない暴挙で
どれだけ深い傷を負ったのかを
壮年の目と感受性とを繊細に描き出すことで
訴えかけた作品と言えるだろう。
なんといっても
少年オスカーを演じた素人のトーマス・ホーン
絆がいきなり断ち切られたことを
彼なりに再生し納得しようと キーをたどっていく見事な演技。
お爺さんを重厚に演じる マックス・フォン・シドーが素晴らしい。
ビオラ・デイビスも印象に残る。
トム・ハンクスやサンドラ・ブロックの暖かい演技
スティーブン・ダルドリー監督の語り口は
大声ではなく静かに切々と 染み入るようだ。
めぐりあう時間たち でも 愛を読むひと でもそうだった。
人が肉体を滅ぼし、精神を滅ぼす戦争に
勝者も敗者もない
あるのは深く刻まれた傷と離散した心たちなのだ。
by arthiropon | 2012-09-09 07:42 | ホームシアター